ブロック切削時の注意点
「IMPブロック」はお客様のご指定グレードをブロック化するサービスです。
御依頼の材料は様々であり、尚且つ切削加工する形状も様々です。
本ページではIMPブロック切削加工する際の注意点を記載します。切削加工時のご参考にして頂ければと思います。
ブロックを切削する上での注意点
ナチュラル系材料、繊維状で無い添加剤を含んだ材料の場合
当社のIMPブロックはアニール処理を行っていない状態でご提供しています。
ブロックより製品を削り出す際に応力が蓄積した状況のブロック材に切削を行う行為により蓄積した応力が部分的に開放されることで、製品がソリ・変形してしまいます。
- アニール処理を事前に行う(アニール処理ご希望の場合はお申し付け下さい)
- ソリ・変形を見越して切削加工を行う
ここでは【2】ソリ・変形を見越して切削加工を行うことについて説明します。
上図は一般的なIMPブロックの製造方法を示します。フィルムゲートより充填された樹脂に下面より圧縮を加えることで、肉厚でありながらボイドを削減する加工技術です。
このことにより下面は高充填領域となります。一般的には上面が高充填となりますが、IMPブロックはこの様な特徴がございます。
ブロックより定尺の平板を削り出す場合、上図の様な変形が予想されます。
このことをご理解の上、粗削り・中仕上げ・本仕上げなどの様に変形をキャンセルする加工方法で進められることをお勧めいたします。
※ブロックをマシンバイスなどで固定して、切削加工を行う場合などは特に注意が必要です。
アニール処理とは:ブロックの内部応力を均一に保つための加工処理です。このことにより切削時の変形を避けることを目的にしています。一般的にはアニール炉を使いアニール条件(温度・時間)により行います。アニール条件は材質・添加剤の種類等で異なります。ある程度の条件(下記に示す)は把握していますが、詳細についてはトライ&エラーを繰り返す必要がございます。また、100%応力除去することは不可能なため、多少のソリ・変形は起こるものとご理解下さい。
繊維状添加剤(ガラス繊維 カーボン繊維 ポチコン等)を含んだ材料の場合
本材料の場合、アニールによる効果はほとんど期待できません。(ポチコンは比較的効果あり)
切削時には上記の材料より更に注意が必要となります。特に高フィラ材や粘弾性の低い材質(芳香族ナイロン系・PPS・PBT等)の場合は注意して下さい。
切削時の変形挙動は上記と同様ですが、変形時に発生する応力クラックが切削時に発生する場合があります。この応力クラックは繊維配向に沿って発生する特徴があります。
上記は製品表面に在るスキン層の繊維配向を示します。
ゲートより射出充填された材料は通常の成形と同様の繊維配向挙動を示します。
肉厚製品がゆえにスキン層の厚さは薄く、2mm程度であると認識して下さい。2mm程度面だしを行った後に切削加工に取り組む必要があります。
対して中心部(コア層)の繊維配向は上記の様に繊維配向されます。このことをご理解した上で切削加工に取り組むことをお勧めいたします。特にブロック中心部が低密度であり、外形部が高い特徴があり、フルサイズのブロックから製品を複数個取ることは避けるようにして下さい。製品形状より切削代を残した大きさで細切れにした後、アニール処理等を施した後に切削に取り掛かることをお勧めいたします。
また、切削時の製品のビリ止めを十分に考慮される必要がございます。ケミカルウッドや石膏などでビリ止めを行うことで、切削時のクラックは大幅に軽減します。 また、繊維配向に沿って切削刃を送りますと刃の摩耗を促進することや繊維方向に切削時の衝撃が加わり、クラックを誘発することが考えられます。このことも十分に考慮して加工を行うようにして下さい。
切削加工時にクラックが発生する場合
※切削加工時にクラックの発生を避けられない場合の対策方法を下記に示します。
IMPブロックは金型を用いて射出成形で製作するブロックであり、ブロック全体に樹脂の熱収縮による応力が掛かり、バランスが取れているとお考えください。
スキン層は高い応力、ブロック中心部は低い応力が掛かっています。この応力差が切削加工を行うことにより部分的に開放されることでクラックという形で現れます。アニールによる応力改善が限定的である理由は繊維状添加剤が応力開放の妨げとなるからです。
対応策として、成形直後にブロックを切断し、コア層を表面に出すことでコア層の収縮を促進させ、応力差を軽減させることで、切削加工時のクラックを発生させにくくします。受注時に加工する製品サイズをお聞きする目的はこのことにあります。
切削加工時のクラック発生が予想される条件
- 高充填繊維状添加剤やカーボンファイバー、ポチコン等の材料の場合
- 繊維状添加剤入り材料において肉厚が厚い場合(詳細はお問合わせください)
- 繊維状添加剤入り材料において薄肉・微細加工を行う場合
上記条件に該当する場合は、事前に製品サイズをお伝えいただくことをお勧めいたします。当社にて成形直後に切断してご提供致します。
※納入後切削加工を行っている際にクラックが発生した際の対処方法
納入後にクラックが発生してしまった場合、切削条件を変更し試した後、解消されない場合は、下記アニール条件によりブロックを高温槽に入れ、各部位の温度が均一になった状態で、切断→冷却→切削加工を試みてください。
上記切断行為に近い効果が得られます。
アニール処理方法
アニール手順は、下記アニール条件によりアニールを行った後に、ブロック表面6面とも約2mm厚で切削加工を施すことで応力は大幅に改善されます。
※表面切削後にアニールを行うことが一般的と言われていますが、当社のブロックは上記方法が最適です。
アニールの代表的な条件を下記に示します。
材料名 | 昇温度(℃) | 保持温度(時間) |
---|---|---|
PI | 280 | 10 |
PEEK | 220 | 5 |
PPS | 200 | 5 |
PEI | 200 | 5 |
PPSU | 200 | 5 |
PSU | 165 | 5 |
PC | 130 | 5 |
PET | 180 | 5 |
PBT | 180 | 5 |
PA6-GF | 160 | 8 |
PA6 | 160 | 5 |
PA66 | 180 | 5 |
POM-C | 155 | 5 |
POM-H | 160 | 5 |
PP-H | 135 | 5 |
室温度より昇温度に達する時間は6時間、昇温度より室温に下げる時間は12時間を目安に行ってください。急激な温度変化は割れ等を誘発するために避けてください。
注意点一覧
ナチュラル系材料、繊維状で無い添加剤を含んだ材料 の場合の注意点
- マシンデバイス等強制的なクランプは使用しない
- 良く切れる刃を使用し、最適な回転速度、送り速度、沈ませ量を最小とする冷却を十分に行う
- 変形量を考慮して粗削り、中仕上げ、本仕上げというように変形をキャンセルする加工方法を採用
繊維状添加剤(ガラス繊維 カーボン繊維 ポチコン等)を含んだ材料 の場合の注意点
- マシンデバイス等強制的なクランプは使用しない
- 良く切れる刃を使用し、最適な回転速度、送り速度、沈ませ量を最小とする冷却を十分に行う
- 変形量を考慮して粗削り、中仕上げ、本仕上げというように変形をキャンセルする加工方法を採用
- 外周6面を2mm程度切削加工にて取り除いた後に加工を行う
- フルサイズのブロックから多数を同時に加工しない。製品形状より切削代を残した大きさで細切れにした後、アニール処理等を施した後に切削に取り掛かることをお勧めいたします
- 切削時の製品のビリ止めを十分に考慮される必要がございます。ケミカルウッドや石膏などを利用してビリ止めを行う
- 繊維配向に沿って切削刃を送りますと刃の摩耗を促進することや繊維方向に切削時の衝撃が加わり、クラックを誘発することが考えられます。刃の送り方向の御配慮をお願いします
切削加工時にクラックが発生する場合
- 事前に製品サイズをご連絡ください。製品サイズより若干大きめのブロックにてご提供致します。
- 納入後切削加工途中でクラックが発生した場合
1 | 『②繊維状添加剤(ガラス繊維 カーボン繊維 ポチコン等)を含んだ材料の場合の注意点』に従い切削加工条件を変更する。 |
---|---|
2 | 1で解消しない場合、アニール温度条件にて高温槽に入れ、ブロック各部位が均一に温まった状態で製品サイズより若干大きめにブロックに切断する。 |
3 | 冷却し、その後切削加工を行う。 |